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spacer_06pix.gifSUMiZ 鵠沼海岸「空と土のシェルター」…………… モンダイを、ミリョクに転じた設計例 (1)

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PROBLEM ? ………………

旗竿型の敷地、そのうえ
小田急江ノ島線に隣接



NO PROBLEM ! ………………

空まで吹き抜ける光庭
遮音壁に抱かれ、しかしエアリー
芝生とウッドのルーフバルコニー




▶光庭。開放階段の上はペントハウス
▶西側ルーフデッキは芝生、東はウッド
▶矩形コートハウス。屋内はエアリー
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高性能シェルターであり
空とつながる庵であり

■鵠沼海岸ビオトープをご評価いただいたお施主様、昔だったら町内会の回覧が回ってきそうな (古すぎ)、
ビオトープのすぐ近くに土地を購入され、設計依頼をいただきました。
敷地は200㎡、建ぺい・容積率40/80%、旗竿型──というより、さらに設計が困難な L字型──。北面西面は隣家に、南面は小田急江ノ島線に
接しています。
住宅は、安全やプライバシーを守る高性能シェルターであり、かつ、空や陽ざし、風、土、……自然とつながる、プリミティブな庵(いおり)であるべき。
相反する要求ですが、両者の最大公約数的な設計ではプア。
シェルターであることが、庵としての魅力を高める、最小最大公倍数的な「解」を見つけたい。
開放するため、あえて閉じる

■L字型、正確には L字が左右反転しているのですが、その縦軸をアプローチとし、横軸の南北西3面の敷地境界ほぼいっぱいに建つコートハウスとしました。南面1274cm、西面637cm の矩形、住まい各スペースの採光通風を確保するための光庭(屋根がないので床面積に算入されません)と、ここまでは定石。
小田急の複線に接する南側を1枚壁に。2F LDK 部分に控えめな連窓を穿ってあるだけです。外装材は、南面に限らずコンクリート系のラムダサイディング。段ボールのような中空構造なので、断熱性、遮音性に優れます。
光庭の内壁は白い FMX(セメント系の塗り壁材)として屋内をさらに明るく。
そしてルーフ。光庭北面をペントハウスに、東にウッド(アマゾンジャラ)、西は芝生の、ツインルーフバルコニーとしました。
小田急の複線がかえって長大な開放空間となり、全周全天遮るものなく、鎌倉、三浦の山稜、江ノ島、相模湾、富士のパノラマ。
お施主様はここでビールを飲みながらの夏の花火を、今から楽しみにしておられます。
この住まいは、南側一面が壁ですが、それは欠点ではなく美点です。
たとえばオーシャンフロントに住宅を建てるとして、1階も2階も海に向かって大きく開放するのは──別荘やレストランならありだとしても──得策ではありません。住まいの、ある部分はあえて「閉じ」、海を見せない抑制、編集が必要です。シェルターに守られ寛いだり、空に身を投げ出し伸びをしたり、居住性のフトコロは深くあるべき。閉じた部分があればこそ、海に向かって開いたそれの価値が高まるものです。

▶光庭とペントハウスを挟み、東はジャラ、西は芝生のルーフバルコニーが
▶小田急江ノ島線に接する南面は、遮音性に優れるラムダサイディングの壁
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物理的スペックを越えて深い空間構成

■住まいの中にある、空につながる空洞=光庭は通風採光をもたらすだけではありません。1F の主寝室からは、バスルーム、光庭、ホビールーム、半屋外のテラスが見通せます。
2F LDK の光庭側は大きく開口し、光庭の中に浮くグレーチングへと連続します。平面的にも立面的にも、物理的スペック以上に奥行きがあり、居住性を深めています。



▶2Fからペントハウスへの開放階段
踏み板には柔らかく足に優しい雲杉材を
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「土」をとりいれる

■人の住まいは本来、原自然→里山→庭→土間→居室と、自然と連続しているものです。陽ざしと風だけではなく、土も取り入れたかった。芝生のルーフバルコニー、光庭の、トネリコが根ざす部分。そして旗竿型敷地ならではの長いアプローチはコンクリートで固めず、芝生とし、天然花崗岩を敷きました。最初のそれは搬入限界の、1帖大の大きさ。「割り」も直線ではなく手割り的。



▶芝と天然花崗岩のアプローチ
手前の敷石は畳一帖大
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竣工は、完成ではなく、始まり

DSC_0817.JPG■2F LDK は21帖。IHクッカーをビルドインした、270×120cm の大きなダイニングテーブルを造り付けました。キッチンカウンターも1枚板で、収納は一切ありません。
彫金を趣味にされているご主人が収納ワゴンを自作、ざっと並べても絵になる食器や鍋を選ぶ……。ひとつひとつ仕上げてゆき、楽しみたいというご主人の希望もあり、あえてベースのみの状態でお引き渡ししました。
竣工は、完成ではなく、始まりです(こちらに関連記事)。

▶光庭に向かって開放されたバスルーム
ボウルはご主人がネットで選んだ素焼き
▶LDKに造りつけた270× 120cm卓
センスの良い、おばんざい店のよう


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SPEC= ■建蔽率/容積率:50/80 ■敷地面積:200.63㎡ ■構造:木造在来軸組工法2階建て ■建築面積:76.50㎡ ■延床面積:123.39㎡

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