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生活感?、おおいにある
暖かく、洗練されたそれが

■「生活感がない」という。褒め言葉として使われる。でもリアルで暖かい感じがしない。インテリア雑誌のスタイリストが仕上げました、みたいな。
生活感は発生する。小さなお子さまがいればなおさら。このリビングにも生活感が満ちている。生活のネガティブな側面を露わにしたそれではなく、ご家族の美意識と幸福による、暖かく、洗練されたそれが。

■ご夫婦の友人を招き、2階リビングに通すと、皆さん、わ、と声を上げられる。そして、言葉は違えど
「外より明るい」と続けるらしい。
照明なしで、外より明るいわけはないのだが、確かに。
白い壁紙や高さ、高窓、障子紙のようにディフューズされた眼の高さの窓など、空間・採光設計により、そう感じるのだろう。
撮影当日は冷たい雨の曇天だったが、リビングはこのとおり。
快晴の日は窓から強い光が壁に落ち、影は濃く、しんと鎮まる。

■ご主人は多趣味で、そのひとつがオーディオ。奥様とお子さまが出かけたときなど、10年ほどかけて集めたクラシックのLPレコードを、パイオニアのプレイヤー、マランツのアンプ、タンノイで鳴らす。
ことに室内楽を好んで聴くが、リビングの音響特性が、室内楽の演奏ホールに似ているのか、すごくリアルに鳴るらしい。
メイドイン大阪、"TRUCK FURNITURE" のソファにもたれ、目を上げると天窓のむこうに月や星が見えたりする。

■このお住まい「SUMiZ 鵠沼海岸 総吹き抜けの家」詳細はこちら

かぞくのへやにはそらがある。

■「引き算」によって、この住まいは成功した。
竣工時の記事に詳しいのでかんたんに)
予算も延べ床面積もたっぷり、なら別だが、一般の都市型住宅であれもこれもと望むと,窮屈で使いにくいものになってしまう。
このケースの場合、クライアントの希望はシンプルで潔いものだった。
「2階に30帖のリビング。天井が高く,倉庫のような大空間を」
それにより捨てるものもある。1階のベッドルームはふたつだけ。2人目のお子さまを設ける予定はないので問題はない。
玄関は狭い。
来客に見栄を張る必要がなければ、収納と,動線としての機能があれば良い。

■側壁一面に本棚が造りつけられた階段──リビングに書棚を置く必要がなくなり、階段だけなら動線に過ぎないそこに、機能とアミューズを与える──を上るとそこは、天井高4.5メートル、片流れの総吹き抜け、30帖、長手方向ほぼ10メートルの「空間」
キッチンの頭上も高く開放的。空間を優先し、トイレも設けていない。

■竣工直後、入居前、家具が無い状態でのそこは、広すぎ、高すぎ、話し声も銭湯のように響き、既視感がない。それは建築家が用意した「スケルトン」、試し、やり直し、仕上げるのはご家族だ。
大手情報系企業の宣伝部にお勤めのご主人、具体的なプランをお持ちで、実行を楽しみにされていた。




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■キッチン腰板に黒板を埋込み。ダイニングテーブルは北欧アンティークのレストア。チェアはイームズの50's

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■ソファは国産 "TRUCK FURNITURE" 左手のチェストは奥様が選んだ北欧アンティークのレストア

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■タンノイのスピーカー、デノンSACDプレイヤー、クラシックのLPレコード……通なアイテムが並ぶ

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■ウォッシャー、冷蔵庫は米GE社製。日本製の方がエコかも知れないが、GEのほうが「道具」らしく

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