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spacer_06pix.gifSUMiZ 鵠沼海岸「総吹き抜けの家」…………… コストカット、しかし、機能、住まい心地は、むしろ高める

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あれもこれもと望むのではなく、
ほんとうに大切なものを見極める
それが豊かな住まいを得る秘訣


■敷地面積と建築予算に限りがある都市型住宅プランで、あれもこれもと望んでしまうと、
無難だけど何の魅力もない、ちまちまとした幕の内弁当になってしまいます。
たとえご予算が潤沢であったとしても、本日の地魚定食にすべきです。
幕の内をあきらめて地魚にするわけではないのです。地魚の方が豊かなのです。
断捨離という流行語がありますが、なにが欲しいのかが明快で、優先度が低いものは
捨てる思い切りの良さをお持ちのお施主さまの場合、住宅デザインがのびのびとし、
ご期待以上の住まいが実現します。
「SUMiZ鵠沼海岸 総吹き抜けの家」はその好例です。
201102鵠沼海岸の家_1007.jpg30畳、天井高4m50cm(最高部)、総吹き抜けのLDK。
床材はフレキシブルボード
■クライアントは30代前半の若いご夫婦で、ご長男はまだ4歳。数年前にみなとみらいの高層マンションを購入、2年居住。
みなとみらいの高層マンションといえばひとつのあこがれ。便利ではあるが、どこか違和感が。
閉じ込められているようなかんじがするのだ。所有物なのに共有物でもある壁や梁や天井に。
居心地を良くしようとしても家具を替えるくらいしか手段がない。
子供をこのような空間で育てたくなかった。
戸建ての検討を始めた。
大手ハウスメーカーのモデルルーム、うまくまとまっている。けれど格別の魅力がない。欠点もとくにない。無難で幕の内弁当的なのだ。
システムキッチンユニットは安い建売のそれのようだった。良いものに変えると高額のオプション額が加算され予算オーバー。それは少なくとも、求めている住まいでは絶対なかった。
3名の建築家に案を出してもらったが、諸我アーキテクトが、ヒアリング時、ライフスタイルについて熱心に尋ね、訊くのが印象的だった。
他者は、そういう話しはそこそこに、間取りや建材やハードウェアのことばかりを話すのだった。

あとで知ったのだが、何年か前、住宅雑誌で気に入りスクラップしておいた住まいの写真があったのだが、それも諸我の仕事だった。
2階LDKには、サニタリーも
クローゼットもカーテンもなく、
30畳、総吹き抜けの空間だけ

■クライアントのファーストプライオリティは、「家族一緒にのびのび過ごせる明るく広いリビング」だった。
ご主人は具体的イメージを持っておられた。「コンクリート打放しの、シンプルで装飾的ではなくて、……倉庫のようでいいんです」
SUMiZでRC造もできなくなはいが、断熱性などの問題で木造とした。
結果は写真のとおりである。
2階のLDK。広さ高さは写真で一目瞭然だが、その居心地まで伝わるであろうか。ほぼ30帖、長手方向が10mの長方形、ルーフは全て片流れの総吹き抜け。




ルーフ最高部450cm。2階はそのひとつの空間(だけ) なのである。
2階にはトイレもバニティもなく、収納も1階にまとめた。優先度の低いものは潔く省いた。
結果、最優先事項であった開放的なリビングが期待以上のものとなった。
このLDK、住宅街のなかにありながら、ブラインドが必要なのは南側のベランダにつながるサッシュだけ。アイレベルの窓は、プライバシーのため特殊なフィルムで磨りガラス様に不透明に。プロカメラマンが撮影で使うディフューザーのように、リビングに入る光を穏やかに。
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吹き抜けの位置にある高窓は大きく、ソファに座ると空が見える。リビングに大開口部はないがエアリィで、窓から差す陽光が帯となって白い内壁に映り、時間や雲により刻々変化する。

■建築家に設計を依頼するのは、徹底的に自分仕様にしてもらい、かつ期待以上の住まいを期待してのことだが、
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それが報われるとは限らない。
建築家とのコラボを売りにしたハウスビルダーの商品には、効率化のため、建材、仕様などに一定の枠を設けている例もある──それで建築家の設計と言えるだろうか──。SUMiZには設計上の制限はなく、あらゆる選択肢から、高いCPを維持しつつ、クライアントの理想実現をもたらすそれを選ぶ。
コストカット、しかし、機能、
住まい心地は犠牲にせず、むしろ
高める。それが "Design"

■SUMiZのこの例の場合、予算が限られていた。
だからたとえば2階リビングのフロアは無垢のチーク材ではなく、フレキシブルボードを使った。繊維で強化したセメントの板、不燃性で外壁やインナーガレージの壁などに使われる。
SUMiZで、床材として使った事例がなかったので、実際に事務所に敷き並べ、ホットカーペットを使って床暖房が利くかをも含め、テストしたうえでの採用だった。
念のため撥水加工を施し、実際に30帖のリビングに張ってみると、素朴ながらプアではなく、自然石のような質実さがあり、ご主人のイメージも実現した。
もとより外壁にも使われる材だから、堅牢さや断熱性など物性はタフで申し分がない。
要するに合理的である。
■キッチンもまた、アイデアと汗で、クライアントにとってのコストパフォーマンスを高めた、明快な事例である。
採用予定の、あるシステムキッチンに合わせ、施工に入ったところ、奥様から相談があった。
あるマンションのモデルルームに使ったシステムキッチンが安く入手できるので、それを使ってもらえないかと。20万円という破格値らしい。
最新のIHコンベクション、幅270cmの大型だから、新品だと100万は下らないだろう。奥様のご希望は叶えるべきである。
ひとつ問題があった。
キッチンのプランは出来上がっていた。そのシステムキッチンは、幅こそ設計と同じだったが、天板の一部が出っ張っており──人造大理石製で、加工が難しいが──カットして、腰壁に納める必要があった。

このキッチン、別のアイデアも実現している。
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腰壁のリビング側一面が黒板になっている。ご家族の伝言板として、ご長男のお絵かきボードとして使う。ホワイトボードではつまらないが、白墨を使う本物の黒板である。
黒板メーカーを探し、既製の最大サイズを訊いたところ、カウンター幅より数センチ短かった。
既製の最大サイズは2万円だったが、特注すると17万になるという。黒板の幅が足りない部分は、黒板と同じ色で塗装し仕上げた。
そのリビングに上る階段の壁一面に書架が設えられた。読書家で蔵書が多いご主人の小さな夢でもあった。
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リビングには極力何も置かず、ミニマルかつ豊かな空間にしたいというご希望もあった。
階段の側壁に書架を設けることで、収納の問題を解決すると同時に、一般にはただの動線に過ぎない階段スペースにアミューズメント性が与えられる。

以上はディティールの一部だが、"SUMiZ鵠沼海岸 総吹き抜けの家" は、不要なものは捨てる潔さをお持ちのクライアントと、SUMiZの職能、サービスの相乗により、比較的低予算かつ、高いコストパフォーマンスで、ご希望以上の住まいを実現した好例である。

SPEC= ■建蔽率/容積率:--/-- ■敷地面積:──㎡ ■構造:木造在来軸組工法2階建て ■建築面積:──㎡ ■延床面積:──㎡

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