最適解。
SUMiZ 横浜南ツインメゾネット (2011年10月竣工)
■他社複数は請負を辞退した、超急勾配のひな壇敷地、狭く急な道路……
その難条件をむしろ利点とし、立地の美点をさらに高め、広く開放的な
共有スペースをもつ、ツインメゾネット的3層構成の、2世代住宅に

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あなたは、どちらをお選びだろう?
1)駅まで徒歩5分、スーパー至近
2)眺望、陽当たり、風通し最高
■宅地2)はたとえば丘陵などの斜面。
傾斜地は、半分、空に立地しているようなものだから、眺望や光や風はもちろん、ブラインドも不要。
開放感とプライバシーが両立する。
幹線道路は傾斜地を避けるから、道路は住民たちだけのもので、通過交通は少なく、静か。
駅やスーパーは遠いかも知れないが、傾斜地は宅地として特権的といえる。
しかし、傾斜地での住まいづくりには、美点と引き替えの難点もある。あたりまえだがアプローチは坂道で、狭隘なことも多い。地滑り対策なども必要。
施工が難しく、工程の数も多くなりがち。
平坦地なら簡単というわけではないが、傾斜地での住まいづくりはことに、作り手の手腕が問われ、結果に差があらわれやすい。
問われるのは、傾斜地の美点を最大限に活かし、難点をも魅力に転ずる設計力。合理的で無駄のない施工の技術と力。もっといえば熱意、誠意。
たとえば横浜南郊のこの住まい、南向きの傾斜地で、住まうには最高だが、設計施工は困難な、その典型的──というか極致ともいえる──ケースだった。まず斜度が急、道路が狭隘、さらに敷地がひな壇状で、上下2段に別れている……。
他社プランは、立地の魅力を削ぐもの
ひな壇を切土造成、ひとつの平面に




■模型写真をご参照。
クライアントの奥様のご両親は下の宅盤01に長く居住。
道の向かいに大きな桜の木があり、そのうえに空がひろがる。
奥様、ご両親ともどもこの住環境に愛着がある。
ひな壇上の宅地02──念願の隣地──が売りに出され購入。今後30年40年にわたるライフプラン実現のため、01、02のふたつの宅盤にまたがる2世代住宅を計画、都内の数名の建築家、ハウスメーカーに打診したが、敷地条件を知ると、先方から辞退したり、こちらから辞退すると安堵したり……。
プランを書いてもらっても、
これだと膝を打つようなものがでてこない。要するに、上の宅盤02を削り、01と同レベルに造成(朱色破線)、そこに2世代住宅を建てるという、無難な方法。ひな壇敷地を活かして設計するのは難しいのはわかるが、それでは02の「高さ」が死んでしまい、眺望や採光、この立地の魅力が削がれてしまう。
SUMiZ を知る方にご紹介いただき、弊社が受注、"ツインバルコニー" という住まい──暮らし──を提案した。
KondouTei1791.jpgフロア02。ご家族3世代の
共有スペースとなる19帖のLDK
住宅というハードだけではなく、
施工というソフトも「設計」が重要






■SUMiZ は、上下宅盤、01、02の高低差がほぼ3m、住宅の階高に等しいことに着目、02レベルに広い共有スペースを設け、上階の03レベルを子世代のプライベートスペース、下階の01レベルに親世代のそれを配し、いわば上下ふたつのメゾネットを重ねた「ツインメゾネット」
的な空間構成とした。
住宅というハードの設計もさることながら、施工というソフトの「設計」も非凡さが必要だった。
難しい施工はいくらでも可能だが、それを予算と工期内に収めるのは簡単ではない。施工を難しくする条件として、まず道路が狭く、クルマがすれ違えない。かつ急坂で、生コン車の積載量が減る(急坂ゆえ液面が傾き、オーバーフローのおそれがある)ため配車を増やさねばならない。
その道路にまして急勾配なひな壇状敷地。宅盤01の施工状況によってはクレーンを道路にしか据えられず、
据えると交通を止めてしまうので必要最小限。資材の多くを人力で上げなければならない。
急勾配ゆえ基礎は万全にする必要があった。上の宅盤02は客土造成されていて、杭多数を打って補強。
一方、下の宅盤01はほとんど岩盤で、ドリルの刃がダメになってしまうほど堅く、難航。
その堅い岩盤を道路面からさらにほぼ2000ミリ掘削、最大高1400ミリのRC製マスを打設。コンクリートで埋め戻して重量を増したうえ、RC造の車庫と一体化、頑丈な基礎、かつ大地震や豪雨時、地滑りを防ぐ擁壁とした。
KondouTei2328.jpg急坂、隘路でも車庫入れしやすいよう
間口を広くとったガレージ
デザインとは
たんにカタチではなく
──予算、敷地条件など──
住まいづくりに
必ずともなう問題を
最適解決すること


■親世帯は階下から、子世帯は階上からアプローチする共有フロア02には、東面南面に連続し、傾斜地ゆえ見晴らしが良いパノラマウインドウが配された19帖のLDK、6帖のゲストルーム、バスplusヴァニティルーム。
LDKのダイニングテーブルは、2家族がゆったり集える、長辺2100ミリの、カスタムデザイン・カスタムメイドしたものだ。
3層構造のツインメゾネットと記したが、生活のシーンでいえば5層の住まいといえる。
プラス1は道路レベルの2車収容大型ガレージ。道路が急坂で狭いため、車庫入れしやすいよう間口をワイドに。クルマを出せば多目的に使える大空間。
もうひとつは、03フロアに連続するルーフバルコニー。桜の梢のうえにパノラマで広がる横浜。
中空に立地しているような開放感、の計5層である。
ひな壇状敷地という難点を活かしたからこそ、多層的で奥行きがあり、開放的で、どこにも光と風がゆきわたるこの住まいが実現した。この冬は横浜も寒いが、陽ざしのある日は日中暖房いらず、など、期待以上の贈り物もあった。
他社の無難なプラン──宅盤02を切土造成──を採用していたら?
造成費が嵩むから、予算的にも有利ではなく、家族がこのレベルで、快適に、楽しく、合理的に暮らせはしなかったのではないだろうか。
KondouTei2373.jpgこの角度から見ると、左右に奥行きが
ある 3層構造であることがよくわかる

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