たとえば、玄関ホールを、玄関ホールとして 作ってしまうと、出入りにしか使えないが、 土間にすると、作業にも、くつろぎにも使える ■クライアントの S氏は以前、インテリア関係の仕事をされていて、奥様の父上はSUMiZ建築家・諸我尚朗の大学時代の建築学恩師。その師が原案を描き、専門家3人でプランを洗練させ、細部を詰めていった。 一見、かなり大胆なプランと感じられるかも知れないが、それは建て売り的平凡さに毒された感性。本プランこそ、お施主様のご希望を素直に実現した、合理的なそれといえる。先述のとおり、クライアントも専門家なので、早くからビジョンを共有しえたという利点もあった。 この住まいは、ある意味未完成である。お施主様が、住まいながら、革靴を足に馴染ませるように、完成させてゆく。 1F は20㎡の広いガレージと土間、畳敷きの1室。 本格的なクルマいじりが趣味のご主人の夢だったガレージはラーチ(構造用合板)の現し、つまり仕上げなし。あとはコンプレッサーなど大道具も収納できる大棚だけ。 水栓とシンクがあり、コンクリート床なので、ガレージ内で洗車したり、床の汚れを流したりできる。 このようにざっくりと大空間を確保しておくと多用途に使える。クルマを出して卓球台を入れればホビールームになるし、子供が思春期になったら、内装だけの比較的軽いリフォームで個室にできる。限りある空間をデッドスペースにせず、イニシャルコストだけではなく、20年30年間にわたる総コストも抑える。 このガレージはドアを介し、同じコンクリート床の土間につながる。 玄関ホールを玄関ホールとして作ってしまうと、出入りの動線としてしか機能しないが、土間にすると多用途に使える。漬け物の壺も置けるし、ガーデニングを趣味とする奥様の作業スペースにもなり、縁台に腰掛けて仕上がった庭を眺めることもできる。 S氏邸、幹線道路から丘の小径に入り、少し上った傾斜地に立地している。南側、邸宅正面は小径を隔ててすぐの位置に自然の広葉樹。 夏は繁ってシェードになり、冬は落葉して陽ざしを入れ、傾斜地ゆえの眺望を開く。 奥様は未仕上げの庭でのガーデニングを楽しみにしており、正面広葉樹と、どのようにシンクロさせるか、あれこれイメージしている。 土間部分には太鼓張りの障子(裏表両面に障子紙)。シェードになり、断熱性も高い。畳敷きの部屋、素焼きの水洗ボウルともあいまって和のイメージだが、単に和風ではない。升目が大きい障子、正方形の半帖畳などにより、和でも洋でも折衷でも和モダンでもなく "SUMiZ" |
▲20㎡のガレージ。ご主人の夢だったプライベートファクトリー ▲手前が土間。縁台は居室でも廊下でもなく、良い意味で曖昧 ▲2F LDK。キッチン上に6畳のロフト。左はインナーバルコニー |
SPEC= ■建蔽率/容積率:----- ■敷地面積:----㎡ ■構造:木造在来軸組工法2階建て ■建築面積:----㎡ ■延床面積:----㎡ |